後藤由香子(ごとう ゆかこ)
伝統工芸の集大成で夢のある世界を追求。
伝統的な工芸(クラフト)の世界である節句人形の世界でクリエイティビティを発揮し、「様々な工芸の集合」から、「ひとつの作品」へと高める節句人形工芸士。
後藤由香子 作号 由(ゆう)yukako goto (master of traditional crafts)
作品展示など
2008年 イタリア、フィレンツエの世界遺産、ヴェッキオ宮殿に作品展示 |
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2009年 銀座 ギャラリー21で個展 |
2010年〜2015年 大阪ハイアットリージェンシー、ギャラリーアットザハイアットにて作品展 |
2015年 横浜人形の家にて「横浜人形の家 ひなまつり展」 |
おひな様は「時空を超えた愛の贈り物」だと私は思います。
生まれたばかりの赤ちゃんの、20年後・30年後の幸せな結婚を願って、おじいちゃんとおばあちゃんから贈られます。
限りある命をつなぐ家族の中で、遠い未来の夢と幸せを願って贈る不思議な贈り物がおひなさまです。
そんなおひな様は、家族の愛がつめ込まれた「玉手箱」のようなものです。
毎年そっとふたを開けたとき、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんからのあたたかくて、深くて、大きな愛の気持ちが、赤ちゃんを包んでくれることと思います。
おひな様を飾る度に、その女の子の記憶にはないかもしれないけれど、記憶より深く心にきざみ込まれた「家族の愛の記憶」がよみがえるのです。
そして大きく成長していく中で、その「愛の記憶」こそが、心の大きな柱を築き、何があっても強く生きられる支えになるのだと思います。
また、パパやママが、もし子育てや生活にくじけそうになっても、赤ちゃんが生まれてくれたことに感謝したあの日のことを..命への感謝と祈りの気持ちを、おひな様がきっと思い出させてくれると信じています。
神話の時代から受け継がれた「雛」に込められた「夫婦和合」の心、夫婦や家族の愛の軸が心になければ、本当の幸せや夢をかなえられないことを、日本人は知っていました。
ひなまつりは、それほど深くて、大きくて、やさしい、世界に誇る素晴らしい文化なのです。
どんなものでもいい...思いを込めて、心を込めて選んだおひな様を通して、
家族の愛の気持ちを届け、つなぎ、感じてほしいと思います。
そして、誇らしげにひな祭りをお祝いして下さい。
10周年を迎えてのごあいさつ
今年は私が今のようなおひなさまを作り始めてから10年という記念の年になります。
あっと言う間の10年でしたが、その間、フィレンツェのヴェッキオ宮殿に「織部」を飾る事ができたり、東京や大阪のギャラリーで個展をさせて頂いたりと、充実した日々を過ごす事が出来ました。
そして何より大切な初節句のお人形に、私のおひなさまを選んで下さった皆様に本当に感謝しています。思い起こせば、当時まだ誰も見た事のない色合いや、それまでに無かったデザインのおひなさまを最初に受け入れて下さったのは、初節句を迎える御家族の方々でした。その後、節句品業界で話題になり、すぐにデザインをコピーされた類似品が出回り、悲しい思いもしましたが、作品の素材やクオリティーへのこだわり、夢をかたちにしたおひなさまを、皆様がしっかりと見極めてくださったことが、何よりの糧となっています。
私はおひなさまとひなまつりを、世界に誇れる奥深い日本の伝統文化だと思っています。今年もそれを未来につなげられるような仕事が出来れば本当に幸せです。
2013年1月 製作室より。 後藤由香子